【高次脳機能障害】回復しているのに、苦しくなる。高次脳機能障害という病気のもう一つの壁

夫に最後のてんかん発作が起きてから、1年以上が経ちました。

幸い、その後は大きな発作もなく過ごせています。
高次脳機能障害は今も残っていますが、少しずつ、少しずつ回復していることを感じています。

でも、その回復と同時に、別の苦しみも見えるようになってきました。

■ 回復するほど苦しくなる「病識」という壁

それは、『自分ができなくなったこと』を本人自身が理解し始めたことです。

以前は、『何ができていないのか』がわからない状態でした。
高次脳機能障害では、脳の損傷によって**病識(自分の障害を理解する力)**が十分に持てないことがあります。

ところが、回復が進むにつれて病識が育ってくると、自分の現状を客観的に見られるようになります。

『計画通りに進められない。』
『同じミスを繰り返してしまう。』
『人との会話についていけない。』

そんな現実を、一つひとつ理解できるようになるのです。
そして、その先に待っているのが、大きな喪失感です。

以前は当たり前にできていたこと。
仕事のこと。
人との関わり。
生活の中の何気ないこと。

それらが思うようにできない現実を受け入れなければならない。

さらに、
『本当はもっとできるはず。』
『元の自分に戻りたい。』
そんな理想と、思うように動かない脳とのギャップに苦しみます。

思考力が回復するほど、そのギャップは鮮明になり、強いストレスや抑うつ状態につながることも少なくありません。

回復しているからこそ苦しい。
この病気の、とても切ない一面だと思います。

■ 初めての専門外来。張り詰めていた糸が緩んだ瞬間

私たちが通っている病院は、てんかんの専門病院です。
てんかんの治療については安心してお任せできますが、高次脳機能障害について相談したところ、

「専門ではないので、高次脳機能障害外来を紹介します。」
と言っていただきました。

そして今回、初めて高次脳機能障害専門外来を受診しました。
現在の状態を詳しく評価するため、5回ほどに分けて神経心理学的検査を受けています。

先日、3回目の診察を終えました。
先生やスタッフの方がこんな言葉をかけてくださいました。

「ご本人、本当によく頑張ってこられましたね。」
「ご家族も、本当によく耐えてこられたと思います。」

その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた糸が少し緩んだような気がしました。

この病院には、医師だけではありません。
作業療法士、言語聴覚士、理学療法士、臨床心理士、精神保健福祉士など、多くの専門職がチームとなって支えてくださっています。
さらに、同じ高次脳機能障害の方が参加するグループリハビリテーションも行われています。

**自分だけじゃない**
**ここなら理解してもらえる**

そんな安心感を持てる場所があることは、本人にとっても家族にとっても、本当に心強いことだと感じました。

■ 「病気の人」としてではなく、一人の人として

回復しているのに苦しくなる。
そんな病気があるなんて、以前の私は知りませんでした。

でも、それでも前へ進もうとしている人たちがたくさんいます。

高次脳機能障害があっても、その人の価値が変わることはありません。
命は、みんな平等。
人種や性別、年齢、障害の有無で、命の価値に優劣がつくことはありません。

だから私は、これからも夫を『病気の人』としてではなく、一人の人として向き合っていきたいと思います。(たまに、あえて病人いじりをして、笑い合っていますが。笑)

焦らず、一歩ずつ。

その歩幅は人それぞれでも、確実に前へ進んでいることに変わりはないから。

もちろん、こんなふうに思えるようになったのも、発症から5年以上経ってからのこと。
当時の私には目の前のことが精一杯で、先のことなんて考える余裕は全くありませんでした。

今、ご自身や大切な人が同じような境遇にある方へは、『頑張れ』ではなく、
『毎日十分すぎるほど頑張ってますよね』とお伝えしたいです。

回復の歩幅は人それぞれ。ご自身の心も大切にしながら、ぼちぼちやっていきましょうね。

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